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書評『楽園のカンヴァス』原田マハ なぜ芸術と小説の相性がいいのか

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

芸術と小説は相性がいい。その代表例が『月と6ペンス』サマーセット・モームであり『楽園のカンヴァス』原田マハである。

絵画という非言語コミュニケーション小説という言語コミュニケーションの相性がいいというのは理にかなっているような気がする。

 あらすじ

早川織絵は大原美術館の監視員である。

ある時、美術館の館長に呼び出されニューヨーク近代美術館MoMAのキュレーターティム・ブラウンに絵のレンタル交渉の窓口になるように指名されたことを知らされる。

早川とティムの出会いは16年前。

それぞれが謎の富豪にスイスの大豪邸に呼び出され、巨匠ルソーの名作『夢』に似た作品を鑑定し、正しく真贋判定をしたものにこの絵を譲ると依頼される。そして、手がかりとなる謎の古書を読むように指示される。

その古書にはルソーを間近で描いたような物語であった。

ルソーと親交が深いピカソ。2人の天才がカンヴァスに込めた思いとは。

感想

面白い!美術に興味がある人や美術館の雰囲気が好きな人は絶対にハマる。

原田マハは『本日はお日柄もよく』から入ったので少し拒否感があった。というのも、『本日はお日柄もよく』では政治家のコピーライターを描いていて、当時(民主党政権交代)の描写であまりにも政治色を強く感じたから。

小説を読むときは、現実とは離れたい。

という考えを持っているので、あまりに内容が現実に沿い過ぎている+政治色が強いと、ちょっとげんなり。そういうことを考えたいときはそういう本を読みます。予想してない方向からボールが来るとうわっとなる。

しかし『楽園のカンヴァス』を読んで、印象がガラッと変わった。

作品全体に流れる静謐なイメージ。過剰でも過小でもない美しい描写。劇中作(古書)の芸術家たちへの観察。

本好きを自称しているのに、避けていたことが恥ずかしいですね。

この作品には芸術への愛が満ち溢れています。

芸術、そして小説について

私は絵画が好きです。幼少の頃、ヨーロッパに住んでいたこともあり美術館は非常に親しみを持っている空間です。

大人になってからもドライブがてらお気に入りの美術館へ一人でふらっと行くのが趣味でした。特に好きなのは、箱根のポーラ美術館。森林に包まれたあの近代的な美術館の雰囲気がとても好きでよく行きました。

なぜ絵画が好きなのか。それは説明できません。

偉い人はアウラがどうとか、心が動かされるものだとか色々言いますが、無理に言語化する必要はないんじゃないかなと思います。

しかし、興味を惹かれてやまなくて言語化して理解したいと思うのは、芸術を生み出す芸術家たち。

芸術家たちは表現しなくてはならない何かを生み出すものだと信じています。

※中世までは職業芸術家というのは教会や貴族専属で自由に描けなかったとか、そこらへんの美術史は割愛。

私が惹かれるのは私にそこまで人生をかけて、生み出そうという『なにか』がない一般ピーポーだからでしょう。

だから、芸術家を描く作品はどれも惹かれます。

きっと創作意欲というのは本人でも説明できないものなんでしょう。それでも行動や心理を見て行くことで疑似体験ができるような気がします。

特にこの『楽園のカンヴァス』の劇中作では芸術家たちが、今そこにいる人物のように想像することができます。ピカソそんなこと言いそう。あ〜ルソーってそんなイメージだよね。という親近感を持つことができます。素晴らしい描写力だと思います。

また終盤で謎の大富豪の正体が明かされるシーンなんかも感動的です。

ぜひ絵画・芸術が好きな人はご一読を!

ついでなので、私が最も好きな芸術家を描いた小説も紹介しておきますね。もし良かったら合わせて読んで見てください。

書評はいつかまた。